経理・財務 浄野 智規
経理部 SS事業管理室 第三グループ
経済学部卒 2011年入社
内定式での仲間の言葉に心が震えた
幼い頃からものづくりが好きだった浄野が、就職活動の時期を迎えて“ものづくり企業で活躍したい”と志望するようになったのは当然のことだった。だが、将来など気にせず野球漬けの毎日を駆け抜けて来て、ふと気がつく。“自分は文系だから、ものづくりは無理じゃないか!”と。だが、そこで浄野はあきらめなかった。“今から技術者にはなれないが、ものづくりに携わる仕事がしたい”と。
「それには、安定した経営基盤を持ちつつ、事業領域が幅広く、常にグローバルに事業を拡大してきた将来性豊かな素材メーカーがいいと思いました。旭化成はあらゆる素材の分野で高い技術力を活かすことで社会に新しい価値を創造してきましたから、今後もさらに新しい領域に挑んでいくはずです。そうした新事業の創出・拡大に携わることで、自分もものづくりの一員として活躍できると思いました」
決め手となったのは、出会った社員の人柄に惚れ込んだことだった。どの社員もフランクでオープン。それでいて頭の回転が速く、常に挑戦的な目標を立てて主体的に仕事に取り組んでいると感じた。
「私は小学校から大学まで野球に打ち込んできて、目標に向かってチームの仲間と主体的に努力することを続けてきました。そんな経験から身につけた仕事観が、旭化成のカルチャーと一致すると感じたのです」
そして迎えた内定式。浄野は、自分の志が間違っていなかったことを確信する。同期入社の女性技術者が、役員と同期全員が居並ぶ中で“これまで世の中を便利にしてきた化学、同時に公害や環境汚染など問題を起こしたのも化学、そしてこれから問題を解決するのも化学。私はこの会社で、化学の力で問題を解決したい”と胸を張って宣言したのである。
「化学への熱い言葉を聞いて、私の心も熱くなりました。そして、こういう仲間を支えることが自分の使命なんだ、という想いを強くしました。あの言葉は今も私の中にしっかりと根づいています」
自ら現場に飛び込んで信頼を築く
“ものづくりの仲間を支えたい”ということで浄野がイメージしていたのは営業の仕事だった。ところが配属は経理部門。経理の専門知識などまったく持ち合わせていなかった浄野は、想定外の配属に驚いてしまった。
「ただ、担当することになったのは管理会計です。決算などにも携わる財務会計ならば会計の専門知識の習得は非常に重要ですが、事業トップの経営判断に資する材料を提供する管理会計には会計の専門性以上に、売上等のデータを分析し、構想する力が必要となります。それには幅広く情報を収集しなくてはならず、私のコミュニケーション力、情報収集力は大きな武器として活かせると考えました。私の経理配属には、そうした意図があったのかもしれません。」
社員1人ひとりとじっくりと向き合い、そのポテンシャルを最大限に引き出そうとする旭化成の姿勢は、こうしたところにも反映されている。
さて、未知の分野である経理の仕事をこなしながら基礎を磨いた浄野は、3年目に守山工場(滋賀県)の経理担当となる。ここで浄野は大きな壁にぶつかってしまった。
「規模の大きな工場で、意思決定のスピード感や取引先の数など、すべてが私の手に余ると感じました。しかも、私が来るまでは経理育ちではない技術系社員が四苦八苦しながら経理業務に対応していたので“やっと経理の専門家が来てくれた”というのが工場側のスタンス。とんでもないプレッシャーからのスタートでした」
浄野は、経理上のルールの整備から着手し、様々な約束事を現場に依頼しようとした。だが多忙を極める現場からは“今まではOKだったのにどうしてダメなのか”“面倒くさい”と反発の声が上がることは容易に想像できた。経理としての仕事をスムーズに進めるには、「現場との双方向の理解」が不可欠である。そこで浄野は一計を案じ、どの経理業務より先に、自ら志願して一週間の現場実習に臨んだ。工場の生産ラインに立ち、他の作業者と一緒に現場で汗を流して、現場の仕事を理解しようとしたのである。
「工程を理解し、旭化成の製造ノウハウを知ることで、現場の仕事を学びました。同時に持ち前のコミュニケーション力で、現場の人たちと人脈を築いていきました」
主体的な現場実習を経たことで、浄野の仕事は劇的に変わる。問い合わせがあれば、生産ラインでの作業内容を思い出して、その現場に最適な答えを提供する。ルールに現場を合わせるのではなく、現場に合わせて柔軟なルールで対応をするわけだ。もちろんそこには、経理としての専門的な判断、事業全体の最適化にもつながるという視点が含まれている。こうした繰り返しによって生まれた“現場ファースト”な対応によって、工場の社員は“自分たちのことをわかってくれている”と感じるようになって、次第に浄野を頼り始めるようになる。そして1年後には“数字のことは、まず浄野に聞け”とまで言われるようになったのだ。
「私から働きかけたことで、工場の“仲間”になることができました。経理だからって、受け身じゃない。自分から主体的に関わることで、仕事はどんどん面白くなっていくんです」
経理の仕事とは、計算が終わってから始まる
守山工場は、セパレータ工場である。セパレータとはLIB(リチウムイオン二次電池)に不可欠の絶縁材だ。これまでPCや携帯電話、スマホなどのIT分野で用途を拡大してきたが、電気自動車や電力貯蔵などの用途でもLIBの需要が世界的に急増していることを受けて、旭化成はセパレータの生産能力拡大を加速。守山工場が多忙を極めていたのも、そうした背景があってのことだった。
今、浄野は守山工場を離れ、本社でセパレータ事業全体の管理会計を担当している。守山工場で培った経験を踏まえ、さらに高い視座から事業全体を見ることになったわけだ。
「確かに経理は計算をします。しかし、計算することが仕事ではなく、計算が終わってから本当の仕事が始まるんです」
独自に収集した情報と計算結果を照らし合わせ、分析した資料を経営層へ提供することで、浄野は事業目標の達成や意思決定の支援に携わっている。その際、工場担当時代に得た人脈からのミクロな情報収集や、経営者の視点に立った市場や競合などのマクロな情報収集も行い、事業戦略や会社の将来像について深く理解することで、初めて提言にふさわしい数字を導き出すことができるのだ。浄野が自分の仕事を「経営者のパートナーであり、事業部で一緒にものづくりに携わる一員」と認識しているのも、当然のことである。
「機関投資家など、外部のステークホルダーからどのように評価されているかという意識も忘れてはなりません。セパレータ市場では旭化成はリーディングカンパニーですから、トップ企業として将来のあるべき姿を描くことは業界全体に対する責務でもあります。日常の管理会計の業務は、そうした将来像からの逆算であり、将来に影響を及ぼすような事象に対しては常にアンテナを張っておくことが求められます」
まさに“攻める経理”が、浄野の真髄だ。
「廊下ですれ違った事業部長にポンポンと肩を叩かれ、“ちょっとこんな資料をつくっておいてよ”と頼まれることも珍しくありません。もちろん言われたとおりの資料ではなく、自分なりにプラスαの要素を付け加えて、事業部長の期待を上回るような内容を心がけます。その資料がそのまま役員会で配布され、事業の意思決定の資料として使われることもあります。こうした仕事の進め方は、いかにも旭化成らしいと感じますね。重要な意思決定につながる相談を立ち話ですることも多いです」
あらゆる相談に応えられる存在に
前述のようにLIBは世界的に需要が急増しており、LIBの性能を決定づける主要部材であるセパレータも大きな市場が見込まれる。旭化成もその需要拡大に応えるべく、莫大な設備投資を決定。主力事業へと育てていこうとする姿勢を打ち出した。
「セパレータのビジネスを、旭化成の不動の主力事業に育てたいと思っています。そのために、ものづくりに携わるすべての人たちをサポートしたい。それも、経理という分野はもちろんのこと、購買や人事、総務、営業なども含めた、総合的な分野で。守山工場では“数字のことは、まず浄野に聞け”と言われましたが、これからは“わからないことは何でも浄野に相談しろ”と言われるようになりたいですね」
経理とは会社のあらゆる活動に携わる業務なので、すべての分野に通じたスーパーなアドバイザーを目指す上で、格好の職種でもある。もちろんそれも、浄野のように、あらゆることに主体的に関わっていく姿勢があってこそである。
今後挑戦してみたいことは、新規事業の立ち上げや、海外の工場の立ち上げなど。浄野は貪欲に新しいことに関わっていこうとしている。将来の目標を問うと、「組織のトップを任せてもらえる人間になりたい。やるからには社長を目指す」と胸を張った。その高い志の宣言は、かつて内定式で浄野の胸を熱くした仲間にもきっと届くにに違いない。
休日の過ごし方
社内の「綱引き部」に入っています。綱引きというと単なる力比べのイメージですが、実は戦略や技術力が重要な、非常に奥が深いスポーツです。年に3回ほど大会に参加していますが、直前には会議室に集まって練習しています。まずはアマチュア部門で優勝を数回重ねた後、プロフェッショナル部門でも勝てるチームを目指しています。
1日の流れ
メールチェック
計数資料作成
部署内の課題共有MTG
営業担当と打合せ、問合せ対応
昼食
メールチェック、問い合わせ対応
報告準備(資料読み込み、想定問答)
経営層への損益報告
税務室との打ち合わせ
計数資料作成
退社