技術者たちが語る、旭化成のIoT

2018年10月1日、旭化成はIoT技術に特化した組織を立ち上げました。ミッションは、ITおよびIoT、AI、統計解析といった技術を駆使した生産現場の改革、サプライチェーンの高度化です。ここでは、IoT技術職 責任者(N.H)に加え、2018年1月にキャリア採用で入社したエンジニア3名が集まり、旭化成におけるIoTの取り組み、IoT技術に関わる実際の仕事内容、エンジニアとしての将来展望などについて語りあった様子をお伝えします。

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なぜ今、旭化成でIoTなのか?

N.H

旭化成はマテリアル領域、住宅領域、ヘルスケア領域など幅広い事業を展開しています。扱っている製品も化学品、繊維、半導体、住宅、医薬品、医療機器と多種多様であり、工場の特徴や設備も製品によって大きく異なります。私たちの目指すところは、世の中に広がりつつあるIoT、AI、統計解析といったデジタル技術を旭化成の生産現場で活用することで、工場のスマート化、デジタル化を推進し、製品の品質、コスト、事業の高度化に大きなインパクトを与えることです。「イノベーション」という名を冠する部門でもあるので、旭化成の生産現場を大きく変えていかなければならないし、革新的な取り組みを推進していきたいと考えています。

T.I

私は前職、計装機器メーカーで働いており、工場の温度計や圧力計といったデバイスからデータを収集するソフトウェアを開発していました。ただし、クライアントの工場で使用されるものなので、データそのものを見ることはできませんでした。実際にデータに触れ、データを分析できるような仕事に就きたいと考えて転職活動をしていたとき、旭化成のIoT技術職の募集を知りました。

K.K

私は総合電機メーカーのコーポレートラボに所属し、半導体のプロセスシミュレーションや量産データの解析を行うことで、生産改善の提案をする社内コンサルタントのようなポジションで仕事をしていました。そこでは、設計、開発、量産など、あらゆる工程を横断して改善を行えることに魅力を感じていたのですが、別の部署へ転勤を命じられ、先行きの見えない状況になったこともあり、データ解析などの技術を活かせるような会社への転職を考えていました。

Y.O

私も前職は総合電機メーカーですが、原子力系の部門に所属していました。プラントの計器からデータを集めて集約するためのサーバや計算機の設計、DCSのプログラム作成などに携わっていました。原子力に関わるシステムなので、数十年前に完成しているレガシーなシステムをできるだけ変えずに受け継いでいくことが重視されていたので、もっと新しいことにチャレンジしたいと考えていました。

T.I

旭化成というと繊維や住宅のイメージを持っていたので、IoTのイメージはまったくなかったのですが、面接を受けたときに「これからはデータを使って自社の生産現場を改革していく」という情熱を感じましたし、データを使ったさまざまな仕事ができるフィールドがあることにも魅力を感じて入社しました。

K.K

私も入社前は、マテリアルや住宅など幅広い製品を川上から川下まで幅広く手がけている化学メーカーというイメージを持っていましたが、IoT技術職の募集を見て、IoTに力を入れていく方針であることを感じました。事業の裾野も広いし、自分の経験してきたデータ解析という仕事との親和性も高かったことが入社の決め手となりました。

Y.O

電機メーカーにいたので、化学メーカーである旭化成には「何となく良い会社」というイメージはありました(笑)。それでも新しいことにチャレンジしようとする姿勢は感じられましたし、IoTをはじめとした新しい技術をユーザーとして使いこなし、自社の生産現場を改善していこうとするミッションに携われることに大きな魅力を感じました。

02

それぞれが携っている業務の内容について

Y.O

私は大きく分けて2つのプロジェクトに携っています。一つは生産現場のIT化であり、これまで紙を使って行っていた業務をタブレットに置き換えるようなシステムを企画しています。もう一つはAIや機械学習に関わる領域であり、工場装置の故障予兆を検知するシステムの設計です。IT化に関しては前職の仕事に近いものの、AIや機械学習に関してはほとんど未経験なので、日々の勉強が欠かせません。

N.H

工場の装置は突然止まってしまうと大きなトラブルが発生してしまいます。装置が故障する時期を予測できれば、計画的に工場を止めることができるし、他の工場との間で生産量を調整することもできるので、Y.Oさんの手がけているシステムは非常に重要なものです。

K.K

私は化学プラントのモニタリングデータから製品の物性を予測する技術の開発に携わっています。具体的にはモニタリングデータをさまざまな手法で解析することで定量化・可視化し、これまで熟練のオペレーターに頼っていた業務をシステム化していく取り組みを行っています。生産現場の方々とのディスカッションが欠かせない仕事でもあります。現場の方の意見をモデルや数式に反映していくために、頻繁に生産現場に顔を出している状況です。

T.I

私はK.KさんやY.Oさんが個々で行っている解析業務を、クラウド上の統一した環境で行えるIoTプラットフォームを構築しています。旭化成の各部門から収集されるデータやノウハウを一つのプラットフォームに集約し、生産や製造に関わる方々も自由に使えるようにすることで、さまざまな相乗効果を生み出せると考えています。同時に生産現場からデータを収集するIoTツールの実験環境構築などにも携っています。

N.H

K.K さんはシンガポールの工場の人たちとも仕事をしていますよね。

K.K

そうですね。今、シンガポールの現場とは月1ぐらいのペースでテレビ電話会議をしていますが、Face to Faceの打ち合わせが必要な場合は現地に行くようにしています。

N.H

私たちの扱っている技術はデジタルですが、現場の方々とのやりとりも含め、人と人との協業は「超アナログ」で進めてほしいと思っています。

T.I

旭化成は対面でコミュニケーションを取ることを重視する文化が根付いていますよね。メールだけで終わらせず、現場に行って話すことを大切にしているので周りの方との信頼関係を早期に築きやすく、キャリア入社の私たちにとってはありがたい環境でもあります。

K.K

上司との距離の近さも魅力だと思います。自分の考えていることを伝えやすく、相手の意見も聞きやすいという、ちょうどよい規模感で組織が構成されていると感じています。

03

IoT技術者として、旭化成で実現したいこと

T.I

現在私は、分析基盤となるIoTプラットフォームを立ち上げ中です。今後さらなるブラッシュアップを繰り返していくことで、まずは旭化成のさまざまな部門にいるデータサイエンティストの方々に使っていただける状態を整えることが現在の目標です。このプラットフォームが実用化されることで、どのくらいの効果があるかを自分の目で見てみたいですし、楽しみながら仕事を進めていきたいと思っています。

K.K

現在はある一つの分野での要素技術を立ち上げている段階です。まずはこの分野での完成度を高めていく方針です。旭化成の事業領域は非常に幅広いので、将来的にはさまざまな事業に横展開できるような状態まで技術を高めていきたいです。また、「データの解析、改善の話ならK.Kに任せよう」と言われるぐらい、社内での知名度を高めていきたいですね。

Y.O

自分が手がけたシステムによって生産装置の突発的な故障が減り、それが数値的な成果となって現れる状況を早く作り出したいと思っています。また、社内外の技術発表会を通して、自分たちが開発した技術やシステムを発表したいという思いも持っています。

T.I

IoTという言葉だけを聞くと何でも簡単にできると思ってしまいがちですが、現場での実用化を考慮するとなると地道な作業もたくさんありますよね。そうしたことを楽しめる人と一緒に仕事がしたいです。

Y.O

確かにIoTやAIについては、まだまだ言葉だけのイメージで語られがちですよね。それでも新しい技術を地に足をつけたかたちで生産現場に活かしていこうとしているのは旭化成のIoT技術です。技術を現場で活かすことにやりがいを感じられる方には最適な環境だと思います。

K.K

私は旭化成に入社する際、コンサルティング会社も検討していたのですが、コンサルティング会社の方に言われたのは、「クライアントから委託された以上のことはできない」ということでした。そう考えると、他の会社から委託される立場ではなく、自社の現場のために改善提案ができる環境は非常に魅力的であると考えています。

N.H

今、私たちが実用化しようとしているシステム、技術、プラットフォームが完成すれば、生産・製造現場の方々と一緒に喜びを分かち合えるものになることは間違いありませんし、そのときの感動はおそらく一生忘れられないものになると思います。ただし、そう簡単に成功にたどり着けるものではないし、失敗も数多く経験するかもしれません。しかし失敗の繰り返しの先に、ようやく道が見えてくると思うので、粘り強く仕事と向き合い続けてほしいと思います。また、現場の方々はもちろん、ここにいるIoT推進職のエンジニアも含め、社内には協力してくれる人が必ずいます。周囲と良好なコミュニケーションを取りながら仕事ができる方に、ぜひ仲間になっていただきたいですね。